「青嵐」

青葉のころに吹く、やや強い風。

『岩波国語辞典』1994





 はじめは、鳥にしようと思ったんですと、描き手は言った。
 「あの、夏の、吹き抜ける風を描きたかったんです。
そうすると、ぱっと浮かぶのは鳥でしょう?
 でも、夏の風というものは、強い風の後に、雨を呼ぶじゃあないですか。
だから、これは鳥じゃない。龍だって、そう思ったんです」

 言葉に店主は描かれた絵を手に取ると、
その後にと、言葉を続けた。

 「その、雨の後には、虹がかかるのね!
 この間の雨の日みたいに!」

 店主の言葉にやや、目を見張って応じながら、
ひとの心のもつ彩りを、ただひとしおに感じいった。